2022 03 11

5年くらい前に書いた短めのおはなしを発掘したのですが、内容がゴミカスすぎるので少しだけリブートさせながら、不定期にちまちまと日記替わりに書いていこうかな。

 

 

ゴミカスはゴミカスなんだけど、10代後半にしか書けないであろう表現もあって嬉しくなっちゃったので…。

 

 

途中で飽きるかもしれないし、逆にプロット練り直しすぎて全然更新されなくなるかもしれません。ご了承を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

題:加護風伝

 

「風はある時にぴたりと止み、大地は死を告げた。」

 

 

 

 

 

 

一章 孤独

 

 人間同士の度重なる争いにより大地は急激に荒廃し、飢えと絶望に包まれた時代があった。

おとぎ話の時代より「世界樹の加護」と語り継がれ世界に吹き渡っていた風も、緑と動物が共存し栄えた歴史も、とうに見る影はなく、木の死骸のみが腐ったその姿を残すだけとなった。


    失われた緑を食糧とする者を始めとして、生物は次々とその姿を晦ませた。
残された生物も、常に死が寄り添う限界の状況の中で生に縋りつく事を余儀なくされていた。

 大気の浄化を担っていた存在が死滅したことで空は泥溜りのように暗く澱み、太陽の光が地上に落ちることを遮っている。
地表には、渇きひび割れ、或いは腐り変色した住居たちが虚しく残されていた。

 

 誰もが静かに衰弱死を待つだけとなった世界の中で、ひたすらに歩き続ける一人の男がいた。
名は“イゾラ・フーデマン”。齢は五十二。

 ごわごわとした茶髪を後ろへ掻き上げ、年相応の年季こそ感じるものの筋肉質である顔には、左のこめかみから顎へとかけて大きな切り傷がある。
擦り切れた布の服に古い焦げ土色のローブを身にまとった、背丈の少し大きな男である。
    腰には刃渡り40cmほどの大きなナイフが、革で仕立てた獣臭いホルダーに収めて括りつけられている。
元は真っ直ぐであっただろう柄は、手の形に合わせて中心へと少しだけ歪んでいる。

    それは、持ち手の戦いの歴史を物語っていた。

 

 彼はかつての争いにおいていずれも先陣を切り、手にした剣一つで数多の敵を薙ぎ倒しては道を切り開いた。
その様子はやがて「戦鬼」と称され、畏れられるに至った。
しかし今や、荒廃した世界の中でその身体も精神も衰えてしまっていた。
とりわけ衰えたのは精神のほうで、戦鬼と称されるにふさわしい闘争心など欠片も残っていなかった。

 彼の心を蝕んだのは、罪の意識である。
国を、民を守るために戦い続けたが、結果として争いはこうした荒廃を生み、多くの人々が飢餓で苦しんでいる。
それが自分の罪であると考えていた。
そして、彼は二度と人に剣を向けないと固く誓ったのだ。


 その一方で、罪の意識が彼の歩み続ける理由でもある。
彼の目的は、荒廃した世界に緑を取り戻すことであった。
    おとぎ話にのみその存在を残す「世界樹」を探し求めれば、そこには緑を世界に取り戻すカギがあると信じていた。
世界樹の加護をもう一度この世界に吹き渡らせるべく、歩いているのだ。

だが世界樹の場所など、到底あてがあるはずはない。
実在するのかすら分からない。
    それでも、彼の歩みが止まることは一度としてなかった。

 

 

 

 

 

つづきはまた今度